「御殿場線が昔、東海道線だった頃、山北駅は重要な起点の駅で、D52と山北駅は切っても切れない間柄」と話すのは、山北町で酒店「露木勝兵ヱ商店」を営む露木尚徳さん。D52の復活を記念して蒸気機関車の形をイメージした陶器に山北町の地酒「丹沢山」を入れた「俺たちのD52」を10月1日より発売する。
参加するのは、山北町酒販店会の「ひだり会」(山北町山北)に所属する10店舗。D52の復活を記念した事業を自分たちの手で行いたいとの思いから、露木勝兵ヱ商店、まつざわ、丸善露木商店、五十嵐酒店、エンドー酒店、おかべ酒店、尾崎酒店、川西屋分店、池谷酒店、横山酒店がメンバーに名を連ねた。
山北駅は1889(明治22)年より東海道本線の箱根越えのルートとして開通した御殿場線の連結操車を担い、大正から昭和にかけて「鉄道の町」の駅として栄えた。ここで活躍したのが大型の蒸気機関車「D52」。役目を終えてからは、そのうちの1両「D5270」が、約半世紀にわたって山北鉄道公園に静かに保存されていた。
その「D5270」が10月14日に奇跡の復活をする。大型コンプレッサーを搭載し圧縮空気を動力源にして再生。公園内の軌道を12メートル延長し自力で走行する。これにより日本国内に7両ある同型車両の中で唯一動く「D52型蒸気機関車」となる。
D52の復活を記念して発売される同商品の箱には、山北町出身の野地悌子さんが描く墨絵が施されている。野地さんにはD52の思い出があるという。「高校生の頃、谷峨駅から小田原国府津駅までSLに乗って通学していた」と話す。そんな思いを大切にして描かれたD52の墨絵が、半世紀の眠りから目覚めて、この秋、再び動き出すD52と、それを祝って発売する酒販店の人々の願いと夢を力強く応援する。
露木さんは「ほら、聞こえるでしょう。D52の走る音と汽笛が。これを肴(さかな)にして地元の銘酒「丹沢山」が味わえる『俺たちのD52』を飲んでもらいたい」と目を輝かせる。「D52の復活は、山北の人々の復活であるし、地域の復活でもある」と杯を重ねる。
販売価格は3,500円。問い合わせは露木勝兵ヱ商店(0465-75-0002)まで。1000本限定。