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多くの願いを込めて「箱根強羅温泉 大文字焼」 100年続く「盂蘭盆の送り火」

箱根古期外輪山の一峰である明星ケ岳の頂上付近で「大文字」(撮影=遠藤詠子さん)

箱根古期外輪山の一峰である明星ケ岳の頂上付近で「大文字」(撮影=遠藤詠子さん)

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 8月22日19時30分過ぎ、箱根古期外輪山の一峰である明星ケ岳(みょうじょうがたけ=標高924メートル)の山頂近くで「大」の文字に点火され、夏の風物詩「大文字焼」が、有縁無縁の精霊の冥福を祈る「盂蘭盆(うらぼん)の送り火」として行われた。

今年は静かな大文字焼き

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 本来ならば、8月16日の予定だったが雨天のため延期。併せて、新型コロナ感染症拡大防止の観点から昨年に引き続き規模を縮小してイベントなどは中止し「大文字焼き」のみが行われた。

 1921(大正15)年に始まった「箱根強羅温泉 大文字焼」。強羅を中心に箱根に住む人々と、避暑客を慰め、同時に地元の旧盆の送り火を兼ねて行われてきた。宵の明星が山の上に輝くことから名が付いた「明星ケ岳」で点火されると徐々に「大」の文字がくっきりと夜空に浮かぶ光景を多くの人が楽しんできた。

 写真を撮影した箱根写真美術館・副館長の遠藤詠子さんは「今日は満月(スタージェンムーン)。月と「大文字焼」とを楽しめればと思っていた。今年はとても静かで神秘的。燃える大の文字が心に染みるすてきなひとときだった」と話す。

 遠藤さんが強羅に住み始めたのは2003(平成15)年。「今年で18回目の大文字焼。強羅全域から正面に望む明星ケ岳に刻まれた大の字は、四季を通じて私達の目を楽しませてくれている。毎年、大文字焼の日には、写真教室やライブイベントを開催し、カフェも大盛況で、一年で一番忙しくにぎやかな日を過ごしてきた。大文字焼と花火大会も、箱根写真美術館の屋上から来場者の方々と一緒に眺めてきた。災害のあったときには被災地を思い、身近な方を失った年にはその人を思い、その年にあったことに思いをはせて、またこの日を迎えられたと喜びを実感する、そんな1日を体験してきた」と振りかえる。

 遠藤さんにとって、昨年初めてゲストを迎えず「大文字焼」を眺める日が来た。そして今年も。「当たり前だと思っていた日常が一変するんだと体感しながら、今はお会いできない方々の健康と安全を願って、1日も早くまた皆でここから大文字焼を眺めたい」と願いを言葉にした。

 実は、箱根写真美術館の展示室壁面には、10円玉大の「のぞき穴」が開いている。ここからのぞくと「大文字焼」が見える仕掛け。年に一度の楽しみとして来館者に喜ばれていたが、現在はコロナ感染防止対策で塞いでいる。遠藤さんは「早くこの『のぞき穴』から大文字焼きを来館された方々とともに楽しみたい」と話す。

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