「白いロマンスカー」として愛された小田急特急ロマンスカー・VSE（50000形・50001編成）が、12月9日開催の「引退記念撮影会」、翌10日運行の「ロマンスカー・VSEラストラン～おもいでは永遠に～」を終え、惜しまれながら完全引退した。

箱根湯本駅のホームには別れを惜しむ人で賑わいを見せた

　2005（平成17）年3月19日に「ス―パーはこね9号」を1番列車として就役した特急ロマンスカー・VSE（50000形）。50001編成と50002編成が投入され、2編成合計で623万1994.2キロを走破し、おおよそ2000万人の乗客を箱根地域に送迎した。新宿～箱根湯本間を3万5169回往復した計算になる。

　既に50002編成は9月24日に引退しており、今回の50001編成の引退で「白いロマンスカー」は姿を消す。2005年度グッドデザイン賞受賞、2006年鉄道友の会ブルーリボン賞受賞、Design for Asia Award 2006 Awards受賞、iF product design award 2007 デザイン賞受賞と輝かしい受賞歴があるも、特殊な構造や装置を採用していることからVSE本来の性能を維持して運行することが難しくなり、約18年の年月に幕を下ろす結果になった。

　ラストランイベントとして行われた「引退記念撮影会」（12月9日）では、撮影会、乗車会、乗車付き撮影会が行われ、多くのロマンスカーファンが参加した。ラストランになる「ロマンスカー・VSEラストラン～おもいでは永遠に～」（12月10日）は3回運行。1回目の運行は、相模大野駅（8時10頃発）～片瀬江ノ島駅～喜多見電車基地～唐木田駅（11時35分ごろ着）。2回目は、唐木田駅（12時30ごろ発）～新宿駅～秦野駅（15時50分ごろ着）。最終となる3回目は、秦野駅（16時10ごろ発）～箱根湯本駅～成城学園前駅（20時ごろ着）。

　ロマンスカーにレンズを向け続けている穐田英則さんは、ラストラン1回目の運行に乗車。「ホームや沿線にはVSEとの別れを惜しむたくさんの方々がいて、手を振って見送っていた。鶴川駅では別れを惜しむメッセージを掲出する姿も。喜多見電車基地に入ると隣に先に引退した50002編成が停車し、2編成が隣同士に並び感動した」と話す。

　穐田さんは1回目の運行列車を降車後に箱根湯本駅に移動して白いロマンスカーの到着を待った。3回目の運行で姿を現す箱根湯本駅では、多くのファンが到着を迎えた。観光客向けの商いをする店主は「噴火のとき、台風による豪雨のとき、そしてコロナ。観光を生業とする人が多い箱根地域の人々は、この困難を黙々と乗り越えてきた。『今､頑張ればロマンスカーが多くの観光客を運んできてくれる』という思いがあるから。私のイメージではいつも白いロマンスカーだった」と振り返る。タクシー関係者は「ホーム全体が見渡せる三枚橋から見るロマンスカーが一番好き。いつも客を新宿から運んできてくれる。ここから見ると白いVSEが一番似合う」と話す。

　ホームに入ってきたVSE（50000形・50001編成）を見て穐田さんは「多くの人の心に残るロマンスカーだったのでは。今までレンズを向け続けて良かった」と振り返る。