台風7号の接近で延期されていた「箱根強羅夏まつり 大文字焼」が8月18日に開催され、「大」の文字が明星ケ岳に燃え上がり約2000発の花火が打ち上げられた。
毎年、箱根強羅観光協会と地元企業の若手スタッフが明星ケ岳に登り点灯作業を行う(2010年の様子)
明治の後半から大正にかけて、箱根には多くの貴族・宮家が来訪。宮城野村の青年たちがたいまつを焼いて奉迎したことが「大文字焼き」の始まりといわれている。明星ケ岳の尾根でたいまつを燃やして歓迎したこともあり、宮家だけでなく旅館の滞在客にも喜ばれたという逸話も残る。
継続的に開催されるようになったのは1921(大正10)年から。避暑客の楽しみと盂蘭(うら)盆の送り火として、箱根・強羅の夏の風物詩になった。
たいまつは通常では脂分が多い松の芯を束ねて作ることが多いが、箱根・強羅の大文字焼きには、箱根一帯に自生する「篠竹(しのたけ)」を使う。6月ごろから刈り取りと乾燥作業を行い、長さ3メートル、直径30センチに束ねて250~300本ほどを用意する。
たいまつは「大」の字が大きく描かれるように、輪郭に沿って二重にして約1.5メートル間隔で配置。打ち上げる1発目の花火を合図に点火する。「大」の字の「一」の部分は長さが108メートル、文字の太さは7.5メートルになる。たいまつの準備と当日の点火作業を箱根強羅観光協会と地元企業の若手スタッフ約90人が担当した。
箱根写真美術館の遠藤詠子副館長は「朝は予想していなかった大雨でハラハラしたが、昼前には雨も上がり天気に恵まれた。箱根写真美術館でも屋上からの花火鑑賞会を行い、アート作品を鑑賞した後に心地いい夜風に吹かれながら、盂蘭盆の送り火、日本の夏の風物詩を楽しむことができた」と話す。
「大文字焼」を推進する箱根強羅観光協会の田村洋一会長は「延期により明星ケ岳山頂近くに添加するスタッフのスケジュール調整が難しくなった。そこで協力してほしいと声がけすると予想を超える協力者がそろい、90人で点火作業を行った。初めて参加する人も多く『来年も参加したい』という声も聞けてうれしかった。今までになくきれいな大文字焼きになり花火も美しかった。今後も有縁無縁の霊を慰める『盂蘭盆(うらぼん)の送り火』として継続していきたい」と意欲を見せる。