湯河原町にたった1店しかない「書店 好文の木」(湯河原町土肥5、TEL 0465-46-6055)は、町を元気にし、併せて本屋の魅力を知ってもらうことを目指して「一箱(ひとはこ) 古本市」を2月24日に開催する。
折しもこの日は、湯河原町にゆかりのある手作り作家の作品が所狭しと並ぶ「ぶらん市」も開催。町内のみならず県内外からも多くの人が来場し町内を回遊するため、にぎわいが予想される。
「一箱 古本市」は、参加者が本を持ち寄って売り買いするブックイベント。地域の店が場所を提供して「大家さん」になり、参加者の「ひと箱さん」がダンボール1箱分の古本を自由に販売する仕組み。2005年に東京の谷中、根津、千駄木で行われた「不忍ブックストリート」に始まり、現在は全国各地でまちおこしイベントとして開催されている。
推進しているのは、ライターで編集者の南陀楼綾繁(なんだろうあやしげ)さん。各地のブックイベントにも関わり「一箱 古本市」を呼び掛けている。「一箱古本市の歩きかた」「谷根千ちいさなお店散歩」「蒐める人 情熱と執着のゆくえ」などの著書がある。
小田原でも開催されており、推進しているのが小田原ブックマーケット実行委員長の牛山惠子さん。回を重ね小田原箱根地域で定着したブックイベントに育っている。
この2人に出会い、湯河原で実施したいと協力を依頼したのが「書店 好文の木」の林純子さん。「湯河原の書店は私ども1店になってしまった。地域の文化を支えるのは本屋。無くならないように頑張り続けるのが私の使命」と話す。そのためにもブックイベントの開催を考えていたという。
「湯河原の本屋を無くしてはいけない」と思う林さん。現在の「書店 好文の木」(創業当時は文昭堂)は、1947(昭和22)年に「湯河原キネマ」に同居してスタートした貸本屋がルーツ。その後、湯河原の落合橋に新刊本の店を開店。店を増やし湯河原町内に3店舗の書店を経営。7年前には現在の店舗に移動した。現在書店は1店のみで他の店舗は業態を変更した。
「古くは流行の文化を支えた映画館が無くなり、今は地域の文化を支えた本屋が無くなっている。映画館と本屋が無くなると地域が寂れていく。そうしたくはない。湯河原の町の本屋として頑張りたい」と意欲を見せる林さん。店頭に「湯河原町にたった一軒だけの町の本屋です。創業70周年。頑張ります」と宣言を貼った。創業者が書き残した「小さな出発」と題した言葉も添えて。
林さんは湯河原在住の作家・田口ランディさんに相談。田口さんからの全面的な協力と、小田原で開催しノウハウを持つ牛山さん、宮上幼稚園の井上美知代さんの協力で実行委員会を立ち上げて推進してきた。林さんは「多くの人の協力で生き残りのための活動が始まった。町の本屋の魅力を、『一箱 古本市』を通して多くの人々に伝えていきたい」と意欲を見せる。
開催時間は11時~15時。