箱根・芦ノ湖畔にありツツジやシャクナゲの庭園で知られる「小田急山のホテル」(箱根町元箱根)で、5年にわたる調査の結果、ほとんど栽培例のないツツジ約70品種とシャクナゲ約40品種の存在が明らかになった。
2015年から行われた山のホテル庭園プロジェクト「男爵の100年ツツジ 100年先への挑戦」。プロジェクト発足のきっかけは2014年の記録的な大雪。雪に埋もれたツツジを助けようと、ホテルスタッフ総出で雪かきを行う中で「庭園はホテルの誇り」と再確認。これまでと同じ手入れだけでは、貴重な庭園が年老いていくことに危機感を抱き始めた。そこで由緒ある庭園の維持・再生を目的に、2015年から10年計画で山のホテル庭園プロジェクトとして「男爵の100年ツツジ 100年先への挑戦」がスタートした。
その内容は、ツツジ・シャクナゲの研究者で新潟県立植物園園長の倉重祐二さんによる「品種調査」。すべての株の植栽台帳を作成して、品種名や生育状況等の管理を始めた。さらに、現在庭園にあるツツジの希少品種保存のため、新潟の草花農家の協力を得て「苗木育成」を開始した。併せて、長期的な視野に立ち、ツツジやシャクナゲが育ちやすい環境に整える「土壌改良」にも着手した。
こうした活動の中で、希少品種を数多く含むツツジ約70品種、シャクナゲ約40品種の存在が明らかになった。ツツジは従来分かっていた約30品種から約70品種3000株を確認。約20品種と思われていたシャクナゲは、約40品種300株の存在が判明した。
更に品種の多さもさることながら、他所ではほぼ栽培例のない、ツツジでは「紫麾(むらさきざい)」「鳳凰殿(ほうおうでん)」、シャクナゲでは「ゴーマー・ウォータラー」「キョウマルシャクナゲ」など、希少品種、古品種など、貴重な品種も数多く見つかった。
これだけの内容のツツジとシャクナゲが一カ所で保存されている庭園は全国的にも珍しく、倉重さんからも「我が国を代表する園芸文化遺産」との評価を受けた。プロジェクトは現在も進行中で、新潟で増やしている苗木も育ち、一部は既にホテル庭園に定植が行われ、庭園を維持し後世に伝えていく体勢も整い始めている。