小田原にあるガトーショコラの専門店「Nama Gateau Au Chocolat(ナマ ガトー ショコラ)」と開成町にある慶応元(1865)年創業の酒蔵「瀬戸酒造店」がコラボして、生ガトーショコラと日本酒の連携による新たな魅力を探る活動が7月、始まった。
推進する「Nama Gateau Au Chocolat」(小田原市栄町1)は昨年4月、小田原で開業した生ガトーショコラの専門店。商品の企画開発と製造を担当するのがシェフの増井睦さん。横浜ベイホテルで西洋料理の基礎を学び、シャングリ・ラ ホテル東京やアマン東京などの5つ星ホテルで経験を積んだ。和を取り入れた革新的なフレンチなど、国籍に縛られない独創的な料理を得意とする。
増井シェフが創作した商品をマーケティング活動でブランド化する役割を担うのは柳下龍介さん。自動車販売会社で営業とマーケティングを担当した後、IT業界のスタートアップ企業でオンラインマーケティングを経験。その後、自動車販売会社の立ち上げにも携わる経験を持つ経営戦略やブランディングを専門とする戦略的ゼネラルマネジャー。
2人は高校時代のパート仲間で同級生。卒業後は夢を目指してそれぞれの道を歩む。あるとき、柳下さんはチョコレートの原料となるカカオの生産農家の厳しい現実と貧困問題を知ることになる。「問題意識を持つ中で自分にも力になれるのでは」と思うようになり増井さんに話す。「いいよ。やろう」の言葉から「Nama Gateau Au Chocolat」の事業がスタートした。
2人は、世界的に知られるベルギーの国際的材料メーカー「ピュラトス社」が展開する独自のサステナブル・プログラム「カカオ・トレース」に賛同。「カカオ・トレース」のチョコレートを100%使い商品を製造している。サステナブル・プログラムでは、カカオ生産者の栽培技術向上支援や加工施設の整備を支援する一方、チョコレート代金の一部をカカオ農家や生産者に還元している。
販売店舗を持たずアトリエで企画・開発・製造をこなす「Nama Gateau Au Chocolat」。小麦粉不使用・砂糖不使用・添加剤不使用・保存料不使用をモットーに「幸せの生ガトーショコラ」(4,000円)と「幸せのナマガトーショコラ for Gift」(2,800円)を販売。リピーターも増えてきた。「新たな魅力をブランドに付けたい」と挑戦を始めた。
その一つが生ガトーショコラと日本酒とのペアリング。柳下さんは「チョコレートやガトーショコラといえば赤ワインとのペアリングのイメージが強い。でも、実は日本酒との相性も抜群。生ガトーショコラのような濃厚な味わいには、甘口の日本酒との相性が特に良く、濃厚なうまみや米の風味を持ち滑らかな口当たりの日本酒が生ガトーショコラを包み込むように口の中で混ざり合う感覚は格別」と話す。
連携する瀬戸酒造店は、幕末からの伝統を受け継いだ代表銘柄を復刻させた酒造店。瀬戸酒造店がある一帯は、かつて「酒田村」と呼ばれていた通り酒米の栽培が盛んな地域。開成町をはじめとした足柄平野の米と、かつての酒蔵に根付いていた酵母を受け継ぎ、幕末から続く瀬戸酒造店の代表銘柄を復刻させている。このことに「杜氏(とうじ)の心意気を感じた」と柳下さん。
連携してペアリングイベントの開催を企画した。柳下さんは「招待制の試飲食イベントを8月3日、『おだわらイノベーションラボ』で開く。生ガトーショコラと日本酒の新しい可能性を探っていく。ごく少人数のイベントだが小さくても良いから一歩一歩前に進む。これからは、生ガトーショコラを味わって幸せになってもらうと同時にカカオを生産する人たちにも笑顔になってほしい」と先を見据える。