小田急電鉄が1957(昭和32)年から1992(平成4)年まで運行していた「ロマンスカー・SE(3000形)」が、8月7日に一般社団法人日本機械学会「機械遺産」として認定される。
歴史に残る機械技術関連遺産を大切に保存し、文化的遺産として次世代に伝えることを目的とする「機械遺産」。小田急電鉄の「ロマンスカー・SE(3000形)」は、118番目として認定される。SEとは、Super Expressの略称。
小田急の「ロマンスカーミュージアム」では認定を記念して8月7日から「機械遺産」認定証や認定のポイントを解説するパネル、SE(3000形)開発当時の設計資料、速度試験に関する資料などを特別公開する。併せて、通常は一般開放していない運転室などSE(3000形)の車内を学芸員が案内するツアーを8月14日~17日の4日間、160人を対象に実施。撮影や見学を通して日本の鉄道史に残る名車の魅力にふれあう機会を提供する。
「ロマンスカー・SE(3000形)」は、高性能な特急専用車両として「新宿~小田原間を60分で結ぶ」ことを目標に、当時の日本国有鉄道・鉄道技術研究所と小田急電鉄とが共同開発した車両。航空技術を応用した最新技術を用いて、空気抵抗低減のため先頭部の形状を「流線形」とし、車両間に台車を配置した「連接構造」や、車体のフレームと外板を一体化した「モノコック構造」を採用し軽量化を図るなど、鉄道車両技術を駆使して開発。東海道本線における高速試験では、当時の狭軌鉄道での世界最高速度145km/hの記録を樹立。その技術は、その後のロマンスカーや、新幹線0系にも影響を与えたといわれている。
ロマンスカー終着の箱根湯本駅エリアでは、この認定を喜ぶ人は多い。新宿から多くの観光客を運ぶロマンスカーを撮り続けている穐田(あきた)英則さんもその1人。穐田さんは「その当時の技術者の意気込みさえ感じることのできる車両だと思う。今回の認定は本当にうれしい」と喜びを隠さない。
穐田さんがロマンスカーと初めて出会ったのが1985(昭和60)年の夏。「高校生で、青春18切符を片手に生まれ故郷の滋賀から友人と夜行列車で関東方面までブルートレインを撮影する旅の途中だった」と当時を振り返る。早朝に東京駅に着き、小田原まで途中下車しながら、九州から戻ってきたブルートレインを迎え撮る行程。午前10時くらいまで撮影し、一段落してから小田原駅や御殿場、沼津などまで脚を伸ばしたという。そこで巡り会ったのがロマンスカー(SSE 3000形)。SE(3000形)を「あさぎり」として運行するために短縮編成用に改良した車両で、SSEは、Short Super Expressの略称。
「私にとっては、初めて見るロマンスカー。撮影した時のことはよく覚えている。その後、2019年5月25日に開催されたイベントでSSE 3000形と久しぶりの対面。同時に今回認定のSE 3000形にも巡り会えた。今回の認定は、ロマンスカーファンには、大変うれしい出来事。今は小田急線沿いに居住。今後も箱根路に向けて走破するロマンスカーを撮り続けていきたい」と意欲を話す。
「特別展示」は8月7日~28日。「学芸員による車内見学ガイドツアー」は8月14日~17日の4日間限定。実施時間は、11時~・14時~の2回(各回30分程度)。参加人数は、各回20人。参加無料(入館料は別途必要)。事前申し込みは不要。