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箱根・甘酒茶屋に歩いて箱根越えをする人のために「芳名帳」 旅人の踏破の記録

「徒歩観光記念御芳名帳」に名前を書く英国からの来店客(撮影=山本聡さん)

「徒歩観光記念御芳名帳」に名前を書く英国からの来店客(撮影=山本聡さん)

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 箱根・旧東海道街道沿いにある「甘酒茶屋」(箱根町畑宿二子山、TEL 0460-83-6418)には、歩いて箱根越えをする人のための「徒歩観光記念御芳名帳」があり、箱根を踏破する旅人がその証に名を記していく。

「甘酒茶屋で箱根でのひとときを過ごす仲むつまじい2人の姿は忘れない」と甘酒茶屋十三代目店主の山本聡さん

 徳川家康によって江戸から京都までの東海道が整備され、街道の目安として「一里塚」が設置された。完成は1612(慶長17)年と言われている。歩く旅人にとって「一里塚」が行程のリズムになっていた。

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 日本橋を出た旅人は、「小八幡(こやわた)」(十九番一里塚)から城下町・小田原に近づき「小田原」(二十番)、「風祭(かざまつり)」(二十一番)、「湯本茶屋」(二十二番)の一里塚を通過して箱根路に入る。

 「箱根の山は天下の嶮」と言われるだけに厳しい山道が続く。途中で「畑宿」(二十三番)の一里塚を通過するが、道中には、女転ばし坂(おんなころばしざか)、橿木坂(かしのきざか)、猿滑坂(さるすべりさか)、追込坂(おいこみざか)などの難所が続く。そして程よく「甘酒茶屋」が見えてくる。

 甘酒茶屋十三代目店主の山本聡さんは「旧東海道を歩いてくる旅人のために、代々の当主がそうしてきたように、毎朝仕込みを欠かさず、暖簾(のれん)を掲げ、峠の茶屋として常夜灯をつけ、季節によっては囲炉裏(いろり)の薪(まき)を火にくべる。その繰り返しをひたすら、『一所懸命』の言葉が教えてくれるように、この地、この店で懸命に続けるのが私の役割」と言葉を選ぶ。

 箱根の長い冬が終わり、やや短めの春が通り過ぎると梅雨が来る。今の時期、小田原から歩く旅人もおり、時には東京・日本橋からの健脚も立ち寄る。一人旅の場合、歩いて旅するワケは誰も話さないし誰も聞きもしないが、「(さあ出発。)お先に」と、会釈して出立を急いでいく。時には、互いを気遣いながらの二人旅もある。

 雨の降る4月19日。「あいにくの雨の中をお揃いのレインコートを着た二人連れが歩いて来店。男性は日本に5年住んいる英国人。早速、『徒歩観光記念御芳名帳』に記入していただいた」と山本さん。店内で箱根でのひとときを過ごす仲むつまじい2人の姿は忘れないという。

 風が晩春であることを教え、雲の流れが変化する天候を知らせてくれる。山本さんは「季節の移ろいが楽しめるのが今の箱根・旧東海道。お一人でも良し、大切にしたい方とでも良し。お体が許せばお歩きいただくのも良し」と餅を焼く手を休めて笑顔で話す。

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