創業145年を迎える「小田原蒲鉾(かまぼこ)」の老舗「山上(やまじょう)蒲鉾店」(小田原市浜町、TEL 0465-24-3050)が、12月に入り年末年始商戦に向けて製造と出荷に全力を注いでいる。
元禄時代に、小田原から相模一帯の土地で生産された米の扱いをなりわいとしていたが、7代目が網元から養子で店主となり、魚の加工を始めてかまぼこ生産を開始した。現在の店主は11代目の上村純正さん。厚生労働省認定ものづくりマイスターに認定された水産加工の職人で開発・品質の総指揮をしている。11代目の両脇を、製造部門担当の工場長で専務の次男・上村佳正さんと、営業部門担当の常務で三男の上村英夫さんが固めて経営。仲の良さから小田原では「かまぼこ三兄弟」の愛称で知られている。
売上や利益など経営の数字面を預かる三男の英夫さんは「原材料と輸送費、包装費など仕入れ原価がアップ。かなり厳しい中で12月を迎えた。うちでは年末年始商戦の売り上げが年間の50パーセントを占めており重要な時期。他社では70パーセント近いところもある。老舗として味を落とすことはできないので創意工夫して期待に応える商品を送り出している」と忙しい手を休めて話す。
かまぼこの品質と原価を決めるのは、「身落とし歩合」と「生鮮グチの配合比率」といわれている。山上蒲鉾店の超特選蒲鉾「梅鶴」では、グチ配合比率が約80パーセント。「グチのうま味と歯ごたえが評価されリピーターも多い。味わっていただく人々のためにも伝統の製造手法や配合方法を変えることはできない。期待を裏切るから」と話す。
山上蒲鉾店では若い人々にも蒲鉾のおいしさを知ってもらうために情報発信を始めている。中でも話題になったのが「板付蒲鉾」1本をそのまま天ぷらにした調理法の紹介。「食べたらおいしかった」「ワインによく合う」などの声が寄せられた。これをきっかけにして「神奈川県よろずバーチャル商店街」にも参加。この店舗でかまぼこの製造工程をバーチャルに紹介したところ「若い方々がアクセスしていただいている」という。
「12月はかまぼこメーカーにとっては勝負のとき。自信ある商品を提供しておいしさで皆さんを笑顔にしていきたい」と英夫さんは話す。