1878(明治11)年に福沢諭吉に国際観光の重要性を説かれた山口仙之助によって箱根宮ノ下で開業した「富士屋ホテル」が創業140周年を迎えた。
在日外国人の憧れが箱根・富士山であること、東京・横浜から近距離にある景勝地であること、温泉が湧き出ていることなどからリゾート事業に適していると判断した山口仙之助。1871(明治4)年に20歳で渡米しており、その際に「将来は牧畜事業が日本には有益」であることを信じて苦労の末に蓄えた資金で7頭の種牛を購入して帰国していた。その牛を手放した資金も「富士屋ホテル」の開業資金になったという。
こうして開業した富士屋ホテル。1887(明治20)年に、道路が整備されたが、登りが急勾配であったため椅子に棒をくくりつけて宿泊者を運ぶ『チェア』を発案して活用。1890(明治23)年には、牛乳を自給するため5頭の乳牛を購入して牛舎を建築し、牛乳搾取販売出張所を設置するなどの工夫をした。
1891(明治24)年には、唐破風の玄関を持つ木造洋風建築の本館が完成。木造でありながら大変強固な建物で、最近まで1階はフロント・ロビー、2階が客室として親しまれ、日本のリゾートライフとクラシックホテルをリードしてきた。
「そしてもうひとつ。140年間受け継がれてきたホテルの味がある」と話すのは、富士屋ホテルの植野高久さん。1920(大正9)年に、「東洋一」と呼ばれ、鉄筋コンクリート造りで内装はタイル張り、総ガラス張りの天井からは自然光が取り入れられている厨房が作られた。ここで富士屋ホテルの味が調理され代々のシェフによって受け継がれ、多くの人々に「おいしい」という幸せを送り続けていたという。
植野さんは「この厨房(ちゅうぼう)。現在、ホテルは耐震補強と改修工事のため4月1日より2年間の休館に入ったが、それまで使われ続けていた。ここから多くの富士屋の味が誕生した」という。創業140年を記念して「人気ランチメニューフェア」を実施。富士屋ホテルを代表する味をランチで提供している。
提供施設は、工事中の富士屋ホテルを除く、湯本富士屋ホテル、箱根ホテル、富士ビューホテル、フルーツパーク富士屋ホテル、甲府富士屋ホテルの各レストラン。提供されるメニューは、「海老ライス富士屋風」(1,980円)、「スパゲッティナポリタン」(2,420円)、「オムライス」(1,760円)、「シャリアピンステーキ」(3,190円)で好評という。