甘酒茶屋(箱根町畑宿二子山、TEL 0460-83-6418)に山梨から「甲州百目柿(こうしゅうひゃくめがき)」が届き、十三代目店主の山本聡さんが恒例の「つるし柿」の作業を行い冬支度が一段落した。
晩秋になると11年も前から、甘酒茶屋のかやぶき屋根を葺(ふ)いた大工の頭領(とうりょう)から「かやぶき屋根の風情にはつるし柿がよく似合う」と「甲州百目柿」が送られてくる。大きな不完全渋柿で、通常のものでも350~400グラム。品種名の「百目」の名称は百匁(ひゃくもんめ=約375グラム)に由来している。
山本さんは「つるし柿にしておくと新年を過ぎるころから渋みが消えておいしい甘味が増してくる。つるし柿は、その風情から冬の到来を告げ、その味から新しい年を感じさせてくれる。季節の移り変わりは身近なことから始まっていく」と渋柿を吊す手を休めない。
「12月に入ると備長炭で焼く餅焼きの暖が心地よい」と山本さん。ほおばる客も笑顔になるのは「力餅」(500円)。味は、海苔で巻いた香ばしい醤油の「いそべ」、ほんのり甘いきな粉の「うぐいす」、きな粉にすり立ての黒ごまを混ぜた「黒ごま」。1皿に2つの味を選べる。いずれも甘酒に良く合う。
山本さんは「今年は大変な年だった。でも季節の流れは休むことなく続いていく。そのひとつひとつの季節を大切にして歴史を守り続けていきたい。旅人にほんの一瞬だけど癒やされるひとときを提供することが自分の人生だと覚悟ができた」と話す。
甲州百目柿をつるし終わると箱根路は冬本番となり旅人は店内の囲炉裏で暖を取る。