旧東海道沿いにある温泉旅館「雉子亭豊栄荘」(箱根町湯本茶屋)に秋の兆しが感じられるこの時期、3代目主人の原健一郎さんは2013(平成25)年から提供していた「子ども用草履(ぞうり)」のことを思い出す。
約400年前の奥飛騨の合掌造りの古民家を移築した「離れ雉子亭」
初代が旧東海道沿いの旅館を買い取って始めた「豊栄荘」。雉(きじ)料理を出す旅館として知られたことから、作家で画家でもある武者小路実篤が「雉子亭豊栄荘」と命名。約400年前の奥飛騨の合掌造りの古民家を移築した離れも「離れ雉子亭」と呼ばれている。
原さんが子ども用として導入したのが「子ども用草履」。せっかく履いても脱げてしまいがちになるのを防ぐための工夫が施されている。宿泊客からも好評で「脱げにくいので走り回る子どもに安全なので購入したい」の声も聞こえていた。
導入を検討したのが8月。原さんは「旅館には子ども連れの家族が多く宿泊しており、廊下を走り回る子どもたちの姿を見て導入を決めた」と振り返る。リピーターの家族からは、「子どもがこの草履を履くのを楽しみにしている」と言われていたが、製造元の都合で仕入れができなくなってしまったという。
原さんは「導入したのが10月。提供できた期間はわずか2年間ほどだが、赤とんぼが飛び、野菊が咲く9月になり、秋が近づくと子ども草履のことを思い出す」と話す。