ポーラ美術館(箱根町仙石原、TEL 0460-84-2111)は、1月28日から展覧会「部屋のみる夢~ボナールからティルマンス、現代の作家まで~」を開催する。
19世紀から現代に至るまでの部屋にまつわる表現に特徴のある作家を取り上げ、「部屋」という小さな世界のなかで織りなされるありようを見つめ直す企画展示会。作品は9組。
近代生活の情景を描き評価を得た印象派の女性画家ベルト・モリゾ(1841~1895年)の「テラスにて」(1874年・東京富士美術館美術館)。
市民が台頭した19世紀に活況を呈した「室内画」というジャンル。無人の室内の情景に美しさを見出していたヴィルヘルム・ハマスホイ(1864~1916年)の作品の中から「陽光の中で読書する女性、ストランゲーゼ30番地」(1899年・ポーラ美術館)。
世紀末のパリでナビ派の一員として活躍したピエール・ボナール(1867~1947年)。生涯にわたって、恋人や家族、友人などの身近な人々や、自宅の室内や食卓といった身の回りの対象をモチーフとし情景の記憶を描き続けていた。「静物、開いた窓、トルーヴィル」(1934年・アサヒビール大山崎山荘美術館)。
1900年以降、より明るい色彩を取り入れたエドゥアール・ヴュイヤール(1868~1940年)は、数多くの肖像画を制作。人物だけ日常を彩る周囲のモチーフや部屋のありようを活き活きと描いている。「書斎にて」(1927~1928年・ヤマザキマザック美術館)。
南仏ニースを拠点として活動し大胆な色使いと筆致により「フォーヴ(野獣)」(絵画運動の名称)と言われたアンリ・マティス(1869~1954年)の作品の中から『窓辺の婦人』(1935年・ポーラ美術館)。
網目模様や水玉をテーマに絵画を制作する草間彌生(1929年~)。平面のみならず立体作品も発表。ベットの作品はこれまでに2点制作されており展示する『ベット、水玉強迫』(2002年・ポーラ美術館)はそのうちの1点。
ドイツ出身の写真家ヴォルフガング・ティルマンス(1968年~)は、1990年代に「i-D」などの雑誌で自らを取り巻く日常を捉えた作品で注目された。ニューヨーク・ロンドン・ドイツなどの拠点とした住居やアトリエで撮影された作品の中から、『静物、ボーン・エステート』(2002年・ポーラ美術館)。
身近な物や日常風景のスケールを操作し、モノの大きさの尺度や時間感覚における人々の認識を問い直す作品を制作してきた髙田安規子・政子(1978年~)。室内と屋外をつなぐ窓や扉を取り上げ、ステイホーム以降変容してきたパブリックとプライベートの境界のあり方を問いかけている。『Relation of the parts to the whole』(2022年、撮影=長塚秀人)。
佐藤翠(1984年~)は、色とりどりの洋服や靴が並ぶクローゼットや花々を鮮やかに描く。守山友一朗(1984年~)は、自らの心が惹かれた日常の場面や旅先の風景を観察して、その奥に潜むもうひとつの世界を描き出している。佐藤の作品は『Floating Dahlias Closet III』(2022年・個人蔵)、守山の作品は『Tea time on a table』(2020年・個人蔵)。
ポーラ美術館の田中令以知さんは「19世紀から現代まで部屋にまつわる9組の作家を取り上げたテーマ展示会。コロナ禍でのステイホームの経験を経て『部屋』という空間の捉え方が変化。同時代に生きる現代作家の作品も新作で展示されるので注目。昨年末から、都心でのプロモーションが話題になっている、草間彌生のベッドの作品を新収蔵。国内では初公開するほか、国内の美術館では国立西洋美術館と当館しか収蔵されていない、ハマスホイの静謐(せいひつ)とした作品が同時に並ぶのも見逃せない。ぜひご来館を」と呼びかける。
営業時間は、9時~17時(入館は16時30分まで)。年中無休(展示替えのため臨時休館あり)。7月2日まで。